雪の華

雪の華 気象学

外出が控えるように政府から要請がある上に雪まで降っているので家に閉じこもって雪のことについて調べて短く纏めてみる。

雪の結晶構造

Phase diagram of water.svg
 図1 水の相図(“氷” ウィキペディア日本語版 より引用 、縦軸が対数であることに注意 )

 まず、水の相図を確認してみよう(図1)。これを見れば種々の温度と圧力条件における物質の状態を知ることができる。相図を見るとわかるように水には多くの結晶多形があることが知られているのだが、通常我々が目にする氷はⅠh( Ⅰはローマ数字の1、hは六方晶系;hexagonalを意味する )だと思ってよい。図2に 氷Ⅰhの結晶構造を示す。マクロな雪の結晶の六角形は明らかにミクロな結晶構造の対称性を反映していることがわかる。

水の結晶構造
図2 氷Ⅰcの結晶構造

雪のできる条件

 雪というのは氷と結晶構造としては同じであるが、ただ液体の水を霧状にして凍らせたところで冒頭の写真にあるような 樹枝状など綺麗な形の雪(氷晶)はできないらしい。生成のメカニズムが異なるのだ。メカニズムについてはWikipediaにまとまっているのでここでは詳しく書かない。氷晶が形成されるのには次の3条件が必要らしい。

  • 気温が氷点下であること。
  • 氷晶核が存在していること。
  • 大気が過飽和の状態かもしくは水滴が浮遊している状態であること 。

氷晶核というのは氷晶が形成される足掛かりになる微粒子のことだ。3条件が揃うとき、過冷却水滴に対しては水蒸気が飽和しておらず、氷晶に対しては過飽和である状況が生じる1)。すると液滴は蒸発が進行して小さくなっていき、逆に氷晶は成長してゆくのだ。こう考えると、雪のできる条件というのは、平衡熱力学だけ考えていては理解できないダイナミックなものなのだとわかる。
 北海道大学の中谷宇吉郎の研究に端を発する一連の研究で様々な雪の形の生成条件(飽和水蒸気圧と温度)は明らかになり、中谷ダイヤグラム2)(図3)と呼ばれているが、ミクロな雪の生成メカニズムはまだまだ分からないことが多いらしく現在でも研究が行われているようだ 3)

中谷ダイヤグラム
図3 中谷ダイヤグラム(Furukawa and Wettlaufer (2007) Phys. Today 60,70-71.)

参考

  1. 古川武彦、大木勇人. ブルーバックス 図解 気象学入門. 第1版. 講談社, 2011, 55-100.
  2. Furukawa and Wettlaufer (2007) Phys. Today 60,70-71.
    https://doi.org/10.1063/1.2825081
  3. 北海道大学低温科学研究所 HP http://www.lowtem.hokudai.ac.jp/index.html
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